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筋トレで「ネガティブ」を大切にする理由

更新日:8月24日

■ ネガティブ=エキセントリックとは?

筋肉が伸ばされながら力を発揮する局面を「エキセントリック収縮」と呼びます。例:スクワットでバーベルを下ろす時、ベンチプレスでバーを胸に下ろす時。コンセントリック(短縮性収縮)やアイソメトリック(等尺性収縮)と並ぶ、筋収縮の基本形態のひとつです。


■ 1. 筋肥大効果が高い

複数のメタ分析で、エキセントリック刺激はコンセントリックと比べても筋肥大を強く誘発することが示されています。エキセントリックはコンセントリックの1.2〜1.5倍の張力を扱え、強い筋力刺激が得られる。

  • Roigら(2009)のシステマティックレビューでは、筋肥大においてエキセントリックが優位であることを報告。

  • Schoenfeldら(2017)のレビューでも、伸張性刺激が筋線維に大きな機械的張力を与え、筋成長を促進することが示されています。

👉 理由:伸張される筋線維に大きな機械的ストレスが加わる → タンパク質合成シグナル(mTOR経路など)が強く活性化。


■ 2. 筋力向上にも有効

  • Douglasら(2017)のメタ分析によると、エキセントリックトレーニングは筋力向上にも有効であり、特に高負荷でのエキセントリック刺激はコンセントリックを凌ぐこともあります。

  • これは、筋肉がエキセントリック局面でコンセントリックの1.2〜1.5倍の張力を発揮できるためです。

👉 実践的意味:重い重量を下ろす局面をコントロールすることで、より大きな筋力適応が得られる。


■ 3. ケガ予防・リハビリでの活用

エキセントリックは筋力強化だけでなく腱・筋のリハビリや障害予防にも利用されます。

  • 特に有名なのは、サッカー選手のハムストリング肉離れ予防として推奨されるノルディックハムストリングエクササイズ(NHE)

  • Petersenら(2011)のRCTでは、NHE導入によりハムストリング損傷率が最大70%減少

👉 理由:エキセントリック刺激は腱の剛性や筋腱複合体の強度を高め、伸張ストレスに耐えられる体を作る。


■ 4. 実際のトレーニングでの取り入れ方

  • コントロール重視:スクワットやベンチで「下ろすのに3〜5秒」かける

  • オーバーロード:補助を使って重い重量を下ろす「ネガティブレップ」

  • 専用種目:ノルディックハム、エキセントリックカーフレイズなど

  • 頻度:高強度エキセントリックは筋損傷が大きいため週1〜2回で十分


■ まとめ

  • エキセントリック局面は筋肥大・筋力向上に優位性がある

  • ケガ予防やリハビリにも有効性が確認されている

  • 実践では「下ろす動作を大切にする」ことから始めると効果的

👉 「上げる」だけでなく「下ろす」動作を意識することが、トレーニングの質を高めるカギになります。


📚 主な参考文献

  • Roig, M., et al. (2009). The effects of eccentric versus concentric resistance training on muscle strength and mass in healthy adults: A systematic review with meta-analysis. British Journal of Sports Medicine, 43(8), 556–568.

  • Schoenfeld, B. J., et al. (2017). Science and Development of Muscle Hypertrophy. Human Kinetics.

  • Douglas, J., et al. (2017). Chronic adaptations to eccentric training: A systematic review and meta-analysis. Sports Medicine, 47(5), 917–941.

  • Petersen, J., et al. (2011). Preventive effect of eccentric training on acute hamstring injuries in men's soccer: A cluster-randomized controlled trial. BMJ, 342, d3277.

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