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筋肉をつければ痩せる? ― 基礎代謝と脂肪燃焼の誤解

■ よくある誤解

「筋肉を増やせば基礎代謝が上がって自然に痩せる」これはフィットネス界隈でも頻繁に耳にするフレーズです。しかし科学的に見れば、この考えは半分正解で半分間違い。正しく理解しないと、期待外れの結果になりかねません。


■ 筋肉が消費するエネルギーは意外と少ない

筋肉は安静時にもエネルギーを消費しますが、その量は1kgあたり1日約13 kcal程度とされています(Wolfe, 2006)。仮に筋肉を5kg増やしても、基礎代謝は1日65 kcal程度の上昇にすぎません。これはおにぎり半分ほどのエネルギー量。つまり、筋肉を増やして基礎代謝で脂肪を落とすのは非現実的です。


■ 脂肪を落とすのは有酸素と食事管理

すでについてしまった脂肪は、筋トレだけで燃えていくわけではありません。脂肪燃焼の主役は

  • 有酸素運動(脂質酸化の促進)

  • 食事管理によるエネルギー収支の赤字の2つです。これらを組み合わせることが、確実に脂肪を落とすための王道です。


■ では筋トレの役割は?

「じゃあ筋トレは意味がないの?」と思う方もいるでしょう。実際には筋トレにも大きな役割があります。

  • 筋肉を増やすことで太りにくくなる

    基礎代謝自体の増加は小さいものの、筋トレを継続すると運動習慣がつき、日常的な活動代謝が上がりやすい。

  • 減量時に筋肉を守る

    食事制限で痩せると筋肉も落ちがち。筋トレはこれを防ぎ、リバウンドしにくい体づくりにつながる。

  • 見た目のボディメイク

    脂肪が落ちたとき、筋肉があることで“引き締まった”体型になる。


つまり、筋トレは「脂肪を直接燃やす」手段ではなく、「太りにくい体を作る」ための基盤と理解すべきです。


■ まとめ

  • 筋肉を増やしても、基礎代謝の上昇はわずか。それだけで痩せるのは幻想

  • 脂肪を落とすには、有酸素運動+食事管理が必須。

  • 筋トレの真価は「太りにくい体」「リバウンドしにくい体」を作ること。

👉 「痩せる=有酸素と食事」+「リバウンド防止=筋トレ」この組み合わせこそ、健康的な体づくりの最短ルートです。


📚 参考文献

  • Wolfe RR. The underappreciated role of muscle in health and disease. Am J Clin Nutr. 2006.

  • Speakman JR, Selman C. Physical activity and resting metabolic rate. Proc Nutr Soc. 2003.

  • Donnelly JE, et al. Appropriate physical activity intervention strategies for weight loss and prevention of weight regain. Med Sci Sports Exerc. 2009.


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