筋肉をつければ痩せる? ― 基礎代謝と脂肪燃焼の誤解
- 青柳貴宏
- 9月26日
- 読了時間: 2分
■ よくある誤解
「筋肉を増やせば基礎代謝が上がって自然に痩せる」これはフィットネス界隈でも頻繁に耳にするフレーズです。しかし科学的に見れば、この考えは半分正解で半分間違い。正しく理解しないと、期待外れの結果になりかねません。
■ 筋肉が消費するエネルギーは意外と少ない
筋肉は安静時にもエネルギーを消費しますが、その量は1kgあたり1日約13 kcal程度とされています(Wolfe, 2006)。仮に筋肉を5kg増やしても、基礎代謝は1日65 kcal程度の上昇にすぎません。これはおにぎり半分ほどのエネルギー量。つまり、筋肉を増やして基礎代謝で脂肪を落とすのは非現実的です。
■ 脂肪を落とすのは有酸素と食事管理
すでについてしまった脂肪は、筋トレだけで燃えていくわけではありません。脂肪燃焼の主役は
有酸素運動(脂質酸化の促進)
食事管理によるエネルギー収支の赤字の2つです。これらを組み合わせることが、確実に脂肪を落とすための王道です。
■ では筋トレの役割は?
「じゃあ筋トレは意味がないの?」と思う方もいるでしょう。実際には筋トレにも大きな役割があります。
筋肉を増やすことで太りにくくなる
基礎代謝自体の増加は小さいものの、筋トレを継続すると運動習慣がつき、日常的な活動代謝が上がりやすい。
減量時に筋肉を守る
食事制限で痩せると筋肉も落ちがち。筋トレはこれを防ぎ、リバウンドしにくい体づくりにつながる。
見た目のボディメイク
脂肪が落ちたとき、筋肉があることで“引き締まった”体型になる。
つまり、筋トレは「脂肪を直接燃やす」手段ではなく、「太りにくい体を作る」ための基盤と理解すべきです。
■ まとめ
筋肉を増やしても、基礎代謝の上昇はわずか。それだけで痩せるのは幻想。
脂肪を落とすには、有酸素運動+食事管理が必須。
筋トレの真価は「太りにくい体」「リバウンドしにくい体」を作ること。
👉 「痩せる=有酸素と食事」+「リバウンド防止=筋トレ」この組み合わせこそ、健康的な体づくりの最短ルートです。
📚 参考文献
Wolfe RR. The underappreciated role of muscle in health and disease. Am J Clin Nutr. 2006.
Speakman JR, Selman C. Physical activity and resting metabolic rate. Proc Nutr Soc. 2003.
Donnelly JE, et al. Appropriate physical activity intervention strategies for weight loss and prevention of weight regain. Med Sci Sports Exerc. 2009.

