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球速を決める要因と、科学的根拠にもとづくトレーニング設計

更新日:8月24日

1) 身体の使い方

球速に影響する大きな要因は 下半身から体幹、上肢への運動連鎖(キネティックチェーン) にあります。

  • ヒップ・ショルダーセパレーション(骨盤―胸郭の捻れ)前脚着地時の骨盤と胸郭の分離が大きいほど体幹回旋速度が高く、結果として球速に好影響を与えることが示されています。PubMedPMC

  • 体幹・骨盤の回転スピード骨盤回転→体幹回転の連鎖(キネティックチェーン)が球速に関与します。ResearchGate

  • ストライド(歩幅)とリード脚の膝伸展=“ブロック”ストライド長や着地時の膝角度、投球中のリード膝の伸展は球速と関連します。リード脚がしっかり止まる(ブロックする)ほど上肢に速度が伝わりやすい傾向です。PMC+1

  • 回旋タイミング体幹の早すぎる回旋は肩内旋・肘外反トルクの増加と関連があり、効率や傷害リスクの観点で望ましくない可能性があります。J Shoulder Elbow


2) 体力要素

  • 下肢パワーと球速の関連➡走・跳のパワー指標(特にラテラル方向のジャンプ)は投球速度と関連を示します。下肢の左右非対称の把握にも単脚系ジャンプテストが有用です。PubMedリッピンコット

  • 回旋系パワーローテーショナル・メディシンボールスローの速度は投球(や打撃)速度と相関を示す報告があります。PubMed

  • 可動性(ROM)股関節や体幹回旋の可動性はセパレーションや体幹回旋速度に関係します。PMC


3) 8〜12週のプログラム

A. 準備期(2–3週)—可動性と基礎筋力

目的:セパレーションを作るための胸椎伸展・回旋、投球側股関節内旋、踏み込み側股関節外旋の改善/基本の押す・引く・ヒンジ・スクワットの型づくり。

  • モビリティ(毎回5–8分):オープンブック、90/90ヒップIR/ER、胸椎エクステンション on フォームローラー

  • 基礎筋力(週2–3):

    • ヒンジ:ルーマニアンデットリフト 3セット×6~8回

    • 片脚:スプリットスクワット 3セット×6–8回/脚

    • プル:チンアップ or ラットプル 3セット×6–8回

    • プッシュ:ダンベルベンチ 3セット×6–8回

  • 低強度メディボール(MB)投げ:ローテーショナルMBスロー 5セット×4回/側(スピード最優先


B. 伸長期(3–4週)—筋力→パワー橋渡し

目的:前脚ブロック力と回旋加速。

  • 筋力(週2):

    • ヘックスバーデッドリフト or ヘックスバークワット 4セット×4~6回

    • スプリットスクワット(前脚ブロック意識)4セット×4回/脚

    • ベントオーバーロウ 4セット×5~6回

  • パワー(週2):

    • ラテラルバウンド(片脚→片脚)4×4/側

    • MBローテーション(進行方向へステップ入り)6×3/側

    • ジャンプテスト(CMJ/ラテラル)で変化を記録PubMedリッピンコット

  • 技術(週2–3):ネットスロー or ショート/ミッド距離の制御重視。

    • cue:「着地→骨盤→体幹→腕」着地後に前膝を伸展して止めるイメージ。PMC


C. 仕上げ期(2–3週)—高速度化

目的:最高速度を引き出す

  • パワー優先(週2):ハードなMBローテーション 8×2/側、ハードル連続ジャンプ、スプリント(10–30m×6~8)

  • 筋力維持(週1–2):全身 3×3~5(高重量・低回数)

  • 投球(週3):1回はガン測定の高意図セッション、他2回は制御+回復重視。

  • フィニッシュドリル:ストライド+ブロックヒップリード→胸郭遅らせの時間差作り。PubMed

TIP:モニタリング週1の球速、ラテラルジャンプ距離MB投げ速度を記録して、伸び悩み時は「下肢パワー不足か、回旋のタイミング問題か」を切り分けます。PubMed+1

4) ウェイテッドボール(加重球)の是非

  • 6週間の加重球プログラムで球速は上がる一方、肩外旋ROMの増加(後方組織ストレスの示唆)や**上肢傷害増加(約25%)**が報告されています。特に高校生以上でも注意が必要です。PMCijspt.org

  • 実施するなら:事前ROM評価(肩外旋・肘伸展可/胸椎回旋・股関節IR)、段階的ボリューム高意図の頻度を限定疼痛=即中止。未成年・既往ありは基本非推奨。概念理解にはこちらも参考。Mike Reinoldサイエンスダイレクト


5) よくある技術的ミスと修正キュー

  • 体幹の早回し→「前脚が完全接地してから回す」「骨盤→胸郭の順」J Shoulder Elbow

  • ブロック不十分→「着地後に膝を伸ばして止める」「つま先〜膝〜股のラインを安定」PMC

  • ストライドが短い/長い→通常比±10%で球速が変動、個体最適を探索。SABR


参考(主要エビデンス)


まとめ

■ 球速を決める3つの要因

  1. ヒップ・ショルダーセパレーション 骨盤と胸郭の捻れ(分離)が大きいほど、体幹回旋速度が上がり、球速に直結します。

  2. リード脚でのブロック 踏み込んだ脚をしっかり伸ばして止めることで、体の回転エネルギーが効率的に上半身へ伝わります。

  3. 回旋系パワーの発揮 ローテーショナル・メディシンボールスローの速度は投球速度と関連があり、回旋パワーを鍛えるのに有効です。

■ トレーニング内容

  • モビリティ(胸椎・股関節):セパレーションを大きくするために柔軟性を確保

  • 下肢筋力・パワー:スプリットスクワット、ラテラルジャンプ

  • 回旋系パワー:ローテーショナルMBスロー(軽い重量でスピード最優先)


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