背中側への過度な芯落下が招くアウトイン軌道
- 青柳貴宏

- 11月13日
- 読了時間: 3分
「芯を落とす」「ヘッドを下げる」「芯落下」などの言葉がSNSなどで広く使われています。確かにトップ選手のスイングをスローで見ると、一瞬バットの芯が落ちるように見えるのですが、意識的に背中側へ落とすのは誤りと言ってもいいのではと考えます。
今回は背中側への過剰な芯落下のデメリットと望ましい芯の落下について整理します。
■ 背中側への芯落下が起こす動作とその問題点
トップからスイングに入る際、ヘッドを自分の背中側へ大きく倒すように落とす誤った意図的な芯落下は、次のような現象を引き起こします。
バットヘッドが身体の回転軸から遠ざかる
→ 回転半径が大きくなり(回転軸からヘッドが遠く離れる)、遠心力が強く働く。
体幹の回転に対してヘッドが外回りする
→ 内から出せず、スイングは外→内の「アウトイン軌道、ドアスイング」に。
打球初速が上がらない
→ 力のベクトルが投手方向に伝わらない。
特に芯落下での「バットヘッドを早く下げる」意識は、打ち出し角のコントロールを失い、スイング軌道のトンネルを消す結果にもなります。
■ 芯落下が起こるメカニズム
自然な範囲での芯落下は、以下のような運動連鎖の結果として生まれます。
下半身からの回転力 → 骨盤の回転
上胴の遅れ(捻転差)によるトルク発生
前腕回外によるバットヘッドのラグ
この一連の動作により、ヘッドが遅れて下がるように見える
つまり「芯落下」は結果として生まれる動きであり、目的として作る動きではありません。
■ 芯落下と言われたら持つべきイメージ
理想は、ヘッドを背中側に落とすことではなく、前方への回転の中でヘッドが遅れて通過する状態をつくること。
具体的には
骨盤と胸郭の分離(捻転差、セパレーション)により、体幹の回転でエネルギーを蓄える
グリップが先行し、ヘッドは遅れてインパクトラインへ入る
結果として、ヘッドはインサイドからボールの後ろを通過する
このとき、見た目上は芯が少し下がっているように見えますが、実際は「落とす」ではなく「遅れて通過する」。これによりイン→インの有効な打撃が望めるスイング軌道になります。
■ まとめ
芯落下は形ではなく結果であり、意図的に背中側に落とすと回転遠心力を強め、アウトイン軌道を生むおそれがあります。
体幹から前方へ流れるエネルギーが正しく伝われば、芯は自然と遅れて通過=落下したように見えることになります。背中側にバットを落とすのは誤りであり、あくまで一連のスイング過程で発生する自然な一瞬のヘッドのラグをおこす間(体幹SSC伸張局面)が、キーポイントになるのではないかと考えています。





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