追い込みは必要か? ― 筋肥大とダイエットの視点から考える
- 青柳貴宏

- 9月11日
- 読了時間: 2分
パーソナルジムなどを利用する理由の一つとして、「追い込んでくれる」点を挙げる方も多いかもしれません。今回は筋トレの追い込みについて考えてみたいと思います。
■ 追い込み(フォーストレップ)とは?
「追い込み」とは、限界まで反復した後に補助者のサポートを受けてさらに数回追加するフォーストレップなどのトレーニング手法を指します。強い疲労や代謝ストレスを与えることで「筋肉を限界まで追い込む」ことを狙ったものです。
■ 筋肥大には必要か?
必須ではありませんが、状況次第で有効です。
筋肥大を決める主要因は、
メカニカルテンション(張力負荷)
総ボリューム(重量 × 回数 × セット数)
とされ、これは複数のレビューで一致しています【Schoenfeld, 2010】。
近年の研究では、限界の1〜3レップ手前で終了しても筋肥大効果は十分得られることが示されています【Helms et al., 2018】。一方で、フォーストレップは強い代謝ストレスを追加できるため、上級者のプラトー打破に有効な可能性が報告されています【Ahtiainen et al., 2003】。
ただし、回復コストが大きい点が難点で、初心者や中級者にとってはむしろ疲労過多になりやすく、必須の手法ではありません。
■ ダイエットには向いているか?
ダイエットにおける主な目的は、
消費エネルギーの増加
筋肉量の維持
です。
フォーストレップは一時的に消費カロリーを増やせますが、疲労が大きく翌日の活動量やトレーニング継続性を損なうリスクがあります。また、食事制限と組み合わせるとオーバートレーニングや怪我のリスクも高まるため、ダイエット目的では推奨されにくいのが現状です【Hackett et al., 2013】。
■ まとめ
筋肥大:追い込みは必須ではないが、上級者が停滞を打破する手段としては有効。
ダイエット:疲労コストが大きいため不向き。継続性を重視すべき。
実務的指針:
初心者〜中級者 → 限界手前で十分効果あり
上級者 → アクセントとして周期的に導入
ダイエット期 → 中強度+安定ボリュームで継続
📚 参考文献
Schoenfeld, B. J. (2010). The mechanisms of muscle hypertrophy and their application to resistance training. J Strength Cond Res, 24(10), 2857–2872.
Helms, E. R., et al. (2018). RPE and proximity to failure in resistance training. Sports (Basel), 6(3), 86.
Ahtiainen, J. P., et al. (2003). Acute hormonal and neuromuscular responses and recovery to forced vs maximum repetitions in strength training. Eur J Appl Physiol, 90, 639–647.
Hackett, D. A., et al. (2013). Effects of training to failure vs non-failure on strength, hypertrophy and power in resistance-trained males. J Strength Cond Res, 27(12), 3262–3270.





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