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爆発的パフォーマンスを生む鍵 ―予備緊張・マッスルスラック・RFD・RSIの関係―

■力は「出す前」から始まっている

どんなスポーツ動作も、実際に動き出す前からすでに“勝負”は始まっています。投球、ジャンプ、スプリント、スイングなどのすべての爆発的な動作は、力を生み出す準備段階で結果が決まります。

この準備段階を理解するキーワードが、予備緊張(Pre-tension)マッスルスラック(Muscle Slack)、そしてそれによって生まれるRFD(Rate of Force Development)RSI(Reactive Strength Index)です。


■マッスルスラック:力を出す前に存在する“たるみ”

「マッスルスラック」とは、筋肉や腱に存在する“たるみ”や“遊び”のこと。

輪ゴムを弾く前に少し緩んでいると、引っ張り始めてから反応が遅れるのと同じで、筋肉もたるんでいる状態では力がすぐに伝わりません。

この「たるみ」を減らすことが、力発揮の速さ動作の効率を高めます。


■予備緊張:たるみを消す“張りの準備”

予備緊張とは、動作前に筋肉を軽く緊張させておくこと。これによってマッスルスラックを消し、筋がすぐに力を伝えられる状態を作ります。

  • 投手が投げる直前、全身にわずかな張りを持たせる瞬間

  • スプリンターがスタート前に身体を沈め、静止している状態

  • バッターがスイング直前に作る“間(ま)”

これらはいずれも「予備緊張」によって身体を“反応できる状態”に整えています。


■RFD:力の立ち上がり速度(出力スピード)

RFD(Rate of Force Development)は、どれだけ速く力を出せるかを示す指標。単純に強いだけではなく、速く力を立ち上げられるかが重要です。


RFDは、

  • 神経系の動員速度

  • 筋線維タイプ(速筋の発火タイミング)

  • マッスルスラックの少なさ(力伝達の速さ)

によって決まりるとされています。


RFDを高めるトレーニング例:

  • オリンピックリフト(クリーン・スナッチ)

  • スピードスクワット・ベンチスロー

  • 軽負荷での高速動作トレーニング

予備緊張が整っているほど、RFDはより効率的に発揮されます。


■RSI:反応筋力指数(反発の効率、切り返しの速さ)

RSI(Reactive Strength Index)は、接地時間と跳躍高の比率で測られる指標で、地面反力を“どれだけ速く効率的に返せるか”を示します。

RSI = 跳躍高 ÷ 接地時間

短い接地で高く跳べる選手ほどRSIは高くなります。つまり、力をためる→返すの流れ(SSC)が上手いということになります。

RSIはRFDと異なり、単発の出力スピードではなく“連続的な切り返し能力”を評価します。

RSIを高めるトレーニング例:

  • ドロップジャンプ(台からの落下→反発)

  • リバウンドジャンプ

  • 片脚ホッピング


■関係まとめ

フェーズ

概念

意味・役割

準備段階

マッスルスラック

筋のたるみ。力伝達のロスを生む。

準備段階

予備緊張

たるみをなくす。反応準備を整える。

力発揮段階

RFD

力をどれだけ速く出せるか(神経・筋系の出力スピード)。

反応段階

RSI

力をどれだけ効率よく返せるか(反発・SSCの効率)。

この4つは直線的な順序というより、連続的かつ相互に影響し合う関係です。

  • 予備緊張でマッスルスラックを減らせば、RFDが高まりやすくなる。

  • RFDが高まれば、反発効率(RSI)も良くなる。

  • RSIが高い動作は、次の動作への予備緊張を自然に生み出す。


■トレーニングへの応用:4要素を意識して鍛える

目的

鍛える要素

トレーニング例

動き出しの速さ

予備緊張・RFD

アイソメトリックプレス、スピードリフト

切り返しの速さ

RSI

ドロップジャンプ、ホップ系

力伝達の無駄削減

マッスルスラック

軽負荷ジャンプ、テンション意識ドリル

総合的パワー

全体連携

オリンピックリフト、SSC系ドリル


■まとめ:「力を出せる準備」が大切

  • マッスルスラック:たるみを知る

  • 予備緊張:そのたるみを消す

  • RFD:力を速く出す

  • RSI:その力を無駄なく返す

筋肉は動き出す前からすでに動いていて準備をしています。力を出す前の準備こそが瞬発力の正体です。


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